2026/06/15 11:48

「エアコン、そろそろ買い替えなきゃ」――そう思って売り場に向かったあなたに、いちばん最初にお伝えしたいことがあります。
2026年のこの夏は、エアコン本体を買えても「取り付けてもらえない」可能性が、例年よりずっと高いのです。不足しているのはエアコンそのものではなく、設置工事に欠かせない“部材”のほう。これは一部の業者だけの話ではなく、テレビや業界紙でも報じられている、全国規模の出来事です。

「本体はあるのに、付けられない」――いま現場で起きていること

2026年6月7日に配信された報道(FNNプライムオンライン/テレビ西日本)では、エアコン設置に必要な部材が手に入らず、「工事の遅れや中止が広がっている」と伝えられました。本体はあるのに、それを壁に取り付け、室外機とつなぐための“周辺部材”が枯渇しているために、工事の予定が立てられない――そういう異常事態です。

福岡県が県内81社に行ったヒアリングでは、「仕入れ値が上がった」と答えた企業が74%、「資材の入手が困難」と答えた企業が62%にのぼりました。これが“ごく一部の話”ではないことが、数字からも分かります。

足りないのは「エアコン」ではなく「工事の部材」

不足しているのは、次のような“地味だけれど絶対に欠かせない”部材たちです。

  • 架台(かだい)……室外機を据えるプラスチック製の台。最も深刻に不足。
  • 配管化粧カバー(スリムダクト)……一部の色は製造が止まっているとの情報も。
  • 被覆銅管(冷媒配管)……銅の高騰で値上がり・品薄に。
  • 断熱材・保温材……原料がナフサ由来のため供給が不安定。
  • 粘着テープ・パテ・ドレンホース……工事必須の消耗部材で品薄。

どれか一つでも欠ければ、安全な設置工事は成立しません。「本体+部材がひと組そろって初めて1台のエアコンが動く」――この前提が、いま崩れかけています。

原因①:ナフサ不足でプラスチック部材が入らない

ひとつめの原因はナフサの不足です。ナフサは原油から精製される石油化学の基礎原料で、架台・カバー・断熱材・テープ類はいずれもこのナフサ由来のプラスチックでできています。中東情勢の悪化で調達が不安定になり、メーカーが出荷を制限。架台は「約1か月前からほとんど入ってこなくなった」という現場の証言も伝えられています。

原油の上流(ナフサ)でつまずくと、その下流にあるプラスチック部材すべてに、同時に影響が及んでしまう。

原因②:銅の高騰で「銅管」も品薄・値上がり

ふたつめの原因は、まったく別の素材――です。冷媒配管(銅管)は金属の銅でできており、銅地金そのものの価格高騰が直撃。「エアコン用の銅管は3年前と比べて約3倍に値上がりした」という声が上がり、電線(銅)も2026年4月から25%の値上げ。一部では買い占めも指摘されています。

つまり2026年の工事は、「プラスチック部材=ナフサ不足」「金属部材=銅高騰」という原因の異なる二つの逆風が同時に吹いている状態。片方が落ち着いてもすぐには解消しない、根の深い品薄です。

メーカーも「二重の値上げ」と出荷制限に踏み切った

空調用の被覆銅管などを手がける因幡電機産業は、理由の異なる値上げを立て続けに通知しました。

  • 2026年2月1日出荷分〜:銅価格の高騰を理由に、標準単価を一律20%以上引き上げ。
  • 2026年6月1日出荷分〜:ナフサの調達不安を理由に、被覆銅管などをさらに20%以上引き上げ。あわせて出荷数量の制限や納期遅れの可能性も示した。

たった4か月で別々の理由による二度の大幅値上げ。しかも「数を絞る・納期が読めなくなる」出荷制限がセット。値上げを受け入れても“モノが回ってこない”のが現場の実感です。

「代替品でしのぐ」も、ほぼ不可能なワケ

「別の素材の配管を使えば?」「カバーは何かで代用できないの?」――けれど、今回は“代替品でしのぐ”という逃げ道も、現実にはほとんど残されていないのです。

銅管の代わりは、事実上ない

冷媒配管は長年ほぼ100%が銅管。代替のアルミ配管は研究・規格化の途上で、「水に弱い」などの弱点があり、一般家庭の取り付け工事で当たり前に使える段階には至っていません。冷媒配管は「銅でなければならない」場面がほとんどで、代替の余地がほぼないのです。

プラスチック部材は「代わりも同じナフサ由来」

架台やカバー、テープも、代わりに使える製品が結局は同じナフサ由来のプラスチック。原料の“川上”が細っている以上、別品番に替えても同じ供給制約の中で奪い合うことになります。木やコンクリートでの自作も、強度・耐候性・安全性の観点から正規工事として誰にでもすすめられるものではありません。

さらに重なる「2027年問題」――予約は数週間待ちに

この部材不足に「2027年問題」が重なっています。2027年度から省エネ基準が引き上げられるため、「基準が変わる前の今のうちに」という需要が前倒しで集中。例年なら7月並みの混雑が5月に訪れ、取り付け予約は「3週間待ち」といった水準に。需要が前倒しで増えているのに、部材が足りなくて工事が進まない“ねじれ”が、今年の遅延を深刻にしています。

2027年問題そのものは エアコンの「2027年問題」とは?2026年製の在庫品を今のうちに選びたい理由 でやさしく整理しています。

結論:今から買って工事を頼んでも、この夏は間に合わない可能性が高い

2026年の夏は次の条件がすべて重なっています。

  1. 設置に必須の部材が、ナフサ不足と銅高騰という二つの原因で同時に枯渇している。
  2. メーカーが値上げと出荷制限に踏み切り、モノ自体が回ってこない。
  3. 代替品でしのぐ道もほぼ塞がれている
  4. 2027年問題で需要が前倒しになり、工事予約はすでに数週間待ち

これらを重ね合わせると、結論はひとつ。今からエアコンを購入して設置工事を依頼しても、今年の猛暑のシーズンに間に合わない可能性が高い――。報道と現場の状況から導かれる、現実的な見立てです。「買えば、すぐ涼しくなる」という当たり前が、今年は当たり前ではありません。

では、どうすればいい?――あわてないための、現実的な備え

① まずは“今あるエアコン”を最大限に活かす

フィルター掃除、室外機まわりの風通しの確保、必要ならプロのクリーニング。これだけで効きが見違えることは珍しくありません。新品が手に入りにくい今年は、「手元の一台を元気にする」ことが何よりの近道です。

② 買うなら「早く・確実に」動く

買い替えが必要なら、“工事の予約まで含めて”できるだけ早く動くのが鉄則。購入前に「取り付け可能な時期」を必ず確認し、工事日まで押さえられるお店を選びましょう。見積もりも複数の業者に早めに相談を。

③ この夏を乗り切る“つなぎ”を用意する

扇風機やサーキュレーターで空気を動かす、遮光カーテンやすだれで日差しを遮る、冷感寝具や保冷剤を活用する。そしてこまめな水分・塩分補給と、がまんしない冷房・避難を。とくに高齢のご家族がいるお宅では、熱中症は命にかかわります。

まとめ:知っておくことが、いちばんの“涼”になる

2026年のエアコン事情は、「本体はあるのに付けられない」というこれまでなかった形の困りごとです。煽られて飛びつくのでも、知らずに後手に回るのでもなく、「いま何が起きているのかを正しく知って、できる備えを淡々と進める」。それが、この暑い夏をいちばん心穏やかに越えるコツだと思います。あなたとご家族が、この夏も無理なく、やさしい涼しさのなかで過ごせますように。

※本記事は2026年6月時点の報道・公表情報をもとにまとめたものです。状況は日々変化するため、購入・工事の際は必ず最新の情報と、お近くの販売店・施工業者にご確認ください。価格・納期・在庫はお店や地域によって異なります。